国会記者会は首相官邸の真ん前、国会議事堂の真横という国の一等地に無料で入居する。建物の国会記者会館は国が建てたものだ。
撮影目的で国会記者会館屋上に上がろうとしたところ、それを認められなかったビデオジャーナリストが、国と国会記者会を相手取り、屋上を使用させるよう求める仮処分命令をきょう、東京地裁に申請した。
訴えを起こしたのはNPO法人「Our Planet TV」と同法人代表理事の白石草さん。白石さんによると経緯はこうだ――
7月6日(金曜)、白石さんは国民運動にまで広がりを見せる官邸前の原発再稼働反対集会の全景を撮影しようと、国会記者会館の屋上に上がろうとして、国会記者会事務局に断られた。
12日に国会記者会あてにFAXで「屋上の使用」を申し入れ、翌13日、弁護士を伴って同会館を訪れた。国会記者会の佐賀年之・事務局長が対応した。
佐賀氏によれば「国会記者会の幹事社(共同通信、朝日新聞、西日本新聞、テレビ東京)に諮ったが、『認められない』との答えだった」。
13日、官邸前の抗議集会に訪れていた老人がトイレのため会館に入ろうとしたが、敷地入口で職員に制止された。用を足せないのは年寄りにとって酷だ。人道上の問題さえある。
筆者は猛抗議した。「国有地に居候する身でありながら納税者が土地に入るのを制限するのは合点がいかない。持ち主の衆議院事務局が言うのなら理解できなくもないが。何の権利があって国会記者会はそんなことができるのか?」と。この模様はIWJのカメラが記録している。
佐賀事務局長は「記者クラブによる会館の使用は120年の歴史があり、私どもは衆議院から管理を任されている」と説明した。
佐賀事務局長は、白石さんと弁護士に対しても同様の説明をしたようだ。
記者クラブが「国民の知る権利に応えるため」との名目で国有地を無料使用するのであれば、同じく「国民の知る権利に応えようとする」クラブ外報道機関の使用を制限することはできないはずだ。
白石さんの代理人となった井桁大介弁護士は厳しく指摘した―
「(記者クラブは)報道の権利を勝ち取っていたにもかかわらず、何が報道の自由か分からなくなってしまった。どれが適切な取材なのか、不適切な取材なのか判断できないから、形式的に記者クラブ員以外の使用を制限した。これは中学生の論理だ」。
原発事故、消費税、小沢政局に関する報道が示すように記者クラブメディアは、国民の知る権利に応えているとは言えない。自らの業界に都合のいいように捻じ曲げているフシさえある。
国有地に居候しながらこの始末だ。国会記者会館の独占使用は、報道の自殺行為とも言える。
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