100日間続いたメディアとの蜜月関係が終わる前日、鳩山首相を記者団の集中砲火が襲った。
鳩山首相は24日、自らの政治資金管理団体をめぐる虚偽記載で元公設秘書が在宅起訴されたことを受け、都内のホテルで記者会見を開いた。会見の場は総理官邸でも民主党本部でもなかった。首相自らが言うように「総理としてではなく一国会議員・鳩山由紀夫の政治資金問題」として釈明するためだ。
弁護士を伴って記者会見に臨んだ鳩山氏は「国民の皆様へ」と題するメモに目を落としながら事件の経緯を述べた。要約すればこうだ―
勝場秘書に一切合切任せきりしていた。勝場秘書が虚偽記載を行ってしまったのは、政治家・鳩山由紀夫に資金調達能力がないように見られたくなかったことと、自分が調達努力を怠っているように見られたくなかったから。年間1億8千万円もの資金提供を受けながら知らなかったのは、親も私も常に周りの人々が面倒を見てくれていたから……
内容は新聞、週刊誌の報道や国会での首相答弁とほとんど同じだった。
記者団の質問は、鳩山氏の責任を問うものがほとんどだった。「6億もの納税を免れていて、税の最高責任者である総理が務まるのか」「国民が納得しなかったら辞任するか」……進退を問う厳しい質問が続いた。サンドバック状態と言っても過言ではなかった。
鳩山氏は「私腹を肥やすつもりはなかった」「政治の停滞は許されない」などと答え、辞任を否定した。終始苦しそうに言葉を発し、返答に詰まる場面もしばしあった。タオルで口を吹いた際はカメラのシャッター音が滝のように響いた。
「首相の言葉の軽さ」を指摘する向きが、このところ多くなった。代表例を挙げると「秘書のやったことは政治家の責任。私だったら国会議員を辞職する」「民主党が政権を取ったら記者会見を開放する」。いずれも言行不一致だ。筆者はこれらついて鳩山氏に質した。
「軽いと言われれば反省しなければならない」「記者会見は来年から開放するように申し伝えている」。首相はこう述べたうえで「どうせ信じて頂けないかもしれませんが…」と“泣き”を入れた。場内から失笑が漏れた。
麻生前首相だったら開き直っているところだ。『自らの非を率直に認め“泣き”まで入れる鳩山という人物は、善人過ぎて政治家には向いていないのではないだろうか』。筆者は直感的に思った。
厳しい質問を浴びせられ放しの記者会見は1時間10分続いた。「ではこれで鳩山由紀夫衆院議員の記者会見を終わります」。司会役の奥村展三・民主党総務委員長が締めくくった。坊ちゃん育ちで人の好さそうな一人の議員が、疲れきった表情で会見場を後にした。総理特有の威厳や倣岸さはカケラもなかった。
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