8月に実施されたアフガニスタン大統領選挙でカルザイ大統領陣営に大掛かりな不正があったとされる問題が、米軍のアフガン戦略に重大な影響を及ぼしている。AFPによれば複数の米政府関係者は18日、「安定した政権がない状況での米軍増派は無責任だ」と話した。
米ホワイトハウスのエマニュエル主席大統領補佐官も同日、CNNテレビの番組で「カルザイ政権についての徹底した分析結果が出ることなしに、米軍増派を決定することはできない」と語った。
現地の最高指揮官であるマクリスタル将軍は兵力4万の増派をオバマ大統領に要求していたが、4万もの大規模増派となれば準備に2ヶ月近くを要することから年内の実施は絶望的だ。
世界中の汚職を一堂に集めたようなカルザイ政権の下での大統領選挙は実施(8月20日)前から不正が行われるものと見られていた。案の上、不正のオンパレードだった。選挙違反などという生やさしいものではない。
・投票日前々日の8月18日、衆人環視のなかで投票用紙が売られた。また有権者には買収が持ちかけられた。
・当日の8月20日、カルザイとすでに記入された8万票がガズニ州で見つかった。
・9月3日、疑問票が2,000票見つかる。
・9月8日、600箇所の投票所が人目のつかぬ場所に隔離されていた(独立選挙委員会の調査)。(この独立選挙委員会でさえカルザイ陣営に買収されている、との見方がある)
アフガニスタン政府発表によれば、大統領選挙の得票率は現職のカルザイ氏が55%、アブドラ元外相が28%。国連がバックアップする「選挙不服審査会」は17日、カルザイ氏の得票率は50%を下回る、とする報告書を出した。EU監視団も「カルザイ票の4分の1は疑わしい」としている。
アフガニスタンの大統領選挙規定では、50%を割れば決戦投票を行わなければならない。米国のクリントン国務長官とフランスのクシュネル外相はカルザイ大統領に対して「決戦投票に応じるように」とプレッシャーをかけている。
だがカルザイ大統領側は、決戦投票を阻止する構えである。実施を遅らせて人々の身動きがとれなくなる冬季に持ち込むつもりだ。
アフガニスタンに侵攻したブッシュ政権も、ゴア前副大統領と争った2000年の大統領選挙で不正があったとされており、政権の合法性が疑われてきた。そのブッシュ政権がインストールしたカルザイ政権も同様に不正な手口で政権の座についているのである。
国の基であるはずの選挙で大掛かりな不正を繰り広げるカルザイ政権。腐敗しきった政権を維持するために米国は反政府武装勢力を軍事力で抑え込んできた。ブッシュ政権ならいざ知らず、もう騙し騙しは効かない。