日本の原子力政策の矛盾を一身に背負う青森県。逆に言えば、同県の政策は日本の原子力政策を左右する。
青森県の政策決定に絶大な力を持つ県知事の選挙は来年6月。脱原発を掲げる医師が、きょう、立候補を表明した。
大竹進氏(前青森県保険医協会会長・63歳)。核漬けにされた青森県で脱原発を訴えてきた市民たちが擁立した。
青森市内で記者会見した大竹氏は、立候補を決意した理由を次のように語った―
「福島の事故は収束どころか、汚染水問題はますます深刻化している。小児甲状腺ガンは100人を超えた。
それにもかかわらず、福島の事故がなかったかのように、大間原発では工事が再開され、むつ市の中間貯蔵施設では使用済み核燃料の受け入れを準備し・・・(中略)
原発・核燃推進をやめ、原子力に頼らない青森を作ることは、私に課せられた使命と考え、立候補することにした」。
基本政策は―
1、原発・核燃をやめて、命と故郷を守る。
2、働きやすい・暮らしやすい心豊かな青森県をつくる。
3、医療・介護・福祉を充実し、社会保障分野の雇用を増やし、青森県を元気にする。
4、子どもがのびのびと成長する教育環境を実現する。
5、県財政を県民のくらしを支える財政に転換する。
6、日本国憲法を遵守し、県政・県民の暮らしに活かす。
原発は使用済み核燃料の処分が困難なことから「トイレのないマンション」と言われる。日本中の原発から出される使用済み核燃料が集中する青森県は、いわば「仮設トイレ」だ。
六ヶ所村の再処理工場の燃料プールには2,957トンもの使用済み核燃料が置かれている(8月末現在)。燃料プールのキャパは3,000トン。満杯に近くなったため、むつ市に中間貯蔵施設が建設された。
両施設はあくまでも「中間貯蔵施設」なのである。青森県は「(六ヶ所村の施設を)最終処分場にしない」という国との覚え書きを交わしているからだ。
ところが、六ヶ所村の再処理工場はトラブル続きで稼働していない。
同工場から放射能漏れが懸念されていた頃、電力会社の幹部が自民党の国会議員のもとを訪れて言った―「先生、あれ(再処理工場)は当分動かないから大丈夫ですよ」。
再処理システムが稼働しなければ「最終貯蔵施設」となるはずだ。「核燃料サイクルは稼働する」という虚構を、国をあげて維持する理由がここにある。
2012年、民主党政権は「2030年代までに原発をゼロにする」との政策を打ち出した。
三村申吾知事は「使用済み核燃料を全国の原発に返す」と言ってのけ、民主党政権を慌てさせた。
大竹氏は「青森県を核のゴミ捨て場にしてはならない。かといってあんな危険な物を簡単に移動させる(元の原発に戻す)わけにはいかない。国民の意見を聞きたい」との姿勢を示した。
原発が争点にならなかった福島県知事選とは違い、青森県知事選挙は原発政策の矛盾そのものを問う選挙戦となりそうだ。