「従軍慰安婦」や「風俗店」をめぐる橋下大阪市長の発言に対する批判は、日を追うごとに厳しさを増す。
きょうは橋下市長の辞任を求める約400人の市民が、大阪市役所を人間の鎖で包囲した。「ハシモト辞めろ」のシュプレヒコールが堂島川と土佐堀川の中州に響く中、800本の腕から成る鎖が庁舎を完全に取り囲んだ。
『聞く耳持ってないあんたには言うだけ無駄や、市長辞めなはれ』と書いたプラカードを手にした女性(60代)は、大阪市住吉区在住だ。昨年、被災地がれき焼却の中止を求めて橋下市長に面会を申し入れたが断られた。
市民の意見を聞こうとしない橋下市長の傲慢さに対する反発が、今回の市庁舎包囲の底流にある。
「(橋下市長が力づくで実施した)職員の思想調査や入れ墨調査はプライバシーの侵害。自分は浮気し放題。何やってんの?」。彼女は怒りをぶちまけた。
登場間もない頃は型破りの政治家として期待された橋下氏だが、今はその面影もない。神戸市から足を運んだ主婦(50代)は憤慨する――
「最初は庶民の気持ちを代弁してくれるように見えたが、毒舌とともに本音を表してきた。憲法を変えて軍隊を持つ、というのがハシモトの思想。慰安婦発言ひとつとっても戦争を肯定していることが分かる。人権、平和、命の尊さがハシモトには分かっていない。これで市長かと思うと情けない」。
市庁舎包囲に先立ち主催者の「日本軍慰安婦問題・関西ネットワーク」と「大阪退職教職員の会」の代表が、大阪市政策企画室に抗議文を手渡した。両者とも橋下市長に対して被害者への謝罪と辞任を求めている。
野党の女性議員からは歴史認識と女性蔑視を糾弾され、民主党からは極右呼ばわり。参院選で選挙協力するはずだったみんなの党からは「一線を画す」とまで突き放された。選挙が危うくなれば維新の国会議員団も座視できない。「橋下発言は不適切」との声明を出した。
中国の新華社通信は14日、中国外務省のスポークスマンの談話として「ショックだ。憤慨している」と述べたと伝えている。韓国外務省のスポークスマンは15日、「歴史を歪曲し、反人道的犯罪を擁護する常識以下の発言だ」と論評。米国国務省当局者は「outrageous(非道な、恥知らず、言語道断)で、offensive(無礼な、侮辱的)なコメントだ」と非難した。
アメリカでは政府筋のみならず、米議会下院でも動きがあった。15日、マイク・ホンダ議員とスティーブ・イスラエル議員が橋下発言に対して共同声明を発表した。
マイク・ホンダ議員は日系3世。戦時中、日系人強制収容所で暮らした経験があり、2007年に慰安婦問題で議会決議を主導している。スティーブ・イスラエル議員は議会のホロコースト委員会委員を務める。
HP上で明らかにされた声明によると、ホンダ議員は、「侮蔑に値する、胸の悪くなるような発言」で、「歴史と人権、強制された若い女性達に対する侮辱」とし、イスラエル議員は「橋下発言を強く非難し、日本政府に対しても第二次大戦中の日本軍が行った悪業について謝罪するよう引き続き求めていく」と述べた。
国の内外から糾弾され、身内からも批判される。「四面楚歌」が現在の橋下氏にはぴたりと当てはまる。橋下市長を次に待つのはリコールだ。