ロバたちがイスラエル軍の爆撃で殺されていた。爆撃の余波を受けたのではない――
UNRWA(国連パレスチナ救済機関)の避難所前は、「ロバ荷車」の停車場になっている。ガザ全体で44ヵ所(7月20日現在)あるUNRWA避難所のほとんどすべてで、だ。
自動車を持たない貧しい人々が、「ロバ荷車」に乗って避難してくるのである。避難所をイスラエル軍が攻撃する。必然的にロバも殺(や)られる。
ガザの庶民にとってロバは欠くことのできない交通手段だ。街から街の移動だけではない。農作物を運搬する。配給の小麦を運ぶ。飲料水を持ち帰る……ロバなしに生活は成立しないのだ。
避難所ばかりではない。筆者はガザの至る所でロバの死体を見た。目を開いたままのロバにハエがワンワンたかっていた。
決して豊かでない人々にとって、ロバが殺されるのは、足を奪われるに等しい。
停戦で農作業が再開できるようになっても、どうやって農作物を市場に運ぶのか。支援の食料が届いても、どうやって自宅まで運ぶのか。
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紙幅の都合により『ガザ発』の記事にはできなかったものの、伝えなくてはならない事が あまた あります。これから『ガザ点描』で少しずつ掲載して行きます。