菅直人首相の年頭記者会見は、お屠蘇気分も吹き飛ぶほど質が悪くレベルの低い内容だった。話せば話すほどこの人物の認識のなさがさらけ出された。
冒頭から「今、世界の国々が日本に追いつけ追い越せでやっている」ときたのだ。「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」などと持て囃されたのは30年も前の話である。日本を失敗モデルとして研究しても、見習おうなどと思う国は今やない。世界から置いてきぼりにされそうになっているのが現状である。菅さんの脳は30年前から「上書き」さえできなくなっているのだろうか。
驚きは続いた。首相は「社会保障への不安が広がっている。財源確保のために消費税を含む税制の見直しを真剣に考える必要がある」と言ったのである。
筆者は怒りが込み上げた。増税の前にやらなければならないことが山とあるだろう。「議員定数の削減」「公務員給与の削減」・・・これらは民主党が政権を獲得した総選挙(09年)のマニフェストで謳い、国民から一票を頂いた約束事ではなかったのか。
異様だったのは記者クラブメディアが消費税増税について一言も質問しなかったことである。新聞・テレビは昨年末あたりからやたらと消費税をはじめとする増税を煽っているが、いみじくも符号する。
呆れる発言は続く。菅氏は「政治とカネを何とかしなければ日本の政治はおかしくなってしまう」として「小沢元代表は国会でキチンと説明して頂きたい」と力を込めた。
一国の総理とあろう者が、党内のゴタゴタを年頭演説に盛り込むのである。英語に翻訳され世界を駆け巡った時、日本の指導者の政治理念が低いことを改めて知らせるだけではないか。
首相は畳み掛けるように自らの認識のなさを露呈した。「政局中心になり過ぎていて十分な国会審議ができなかった。国会で政策的な議論はなく(野党が)解散・総辞職を求めていることは国民の期待に合わない」。
菅政権の外交や財政などでの不手際は突っ込みどころ満載だった。瀕死の政権与党を攻めて解散総選挙に追い込むのが野党の仕事である。野党にとって願ってもない展開となったのは一に菅首相の指導力のなさである。それは省みず、自分が与党になったら野党に対して「政局は止めて政策論議に集中せよ」というのである。菅さんらしいご都合主義だ。
“バカにつける薬はない”と言うが、菅さんにつける薬もないようである。
記者クラブの総本山にあたる内閣記者会からの質問は、「内閣改造と党人事」「小沢氏への離党勧告・議員辞職」「仙谷官房長官、馬淵国交相への問責」「予算」などに終始した。菅首相が説明したいものばかりだった。
フリー陣営からは上杉隆記者が「記者会見のフェアなオープン化はどうなっているのか?」と質した。菅氏は「私の記者会見はオープン化しており、閣僚懇でも指示している」とニベもなく答えた。最後まで現状認識のなさをさらけ出す首相だった。
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