安倍首相がきょう午前、新宿御苑で「桜を見る会」を催した。筆者は首相の「おっかけ」ではないが、抗議のデモ隊が会場を包囲すると聞き、取材に出かけた。
警戒が厳重なのに驚いた。新宿通りに機動隊のカマボコ(隊員輸送用のバス)が横付けされ、大木戸門前にはバリケードも設けられた。十重二十重に制服警察官が配置されている。
デモ隊は排除されたのかと思い、裏側の千駄ヶ谷門に回った。こちらはバリケードこそないが、制服警察官で一杯だ。
筆者が大通りをはさんで門の正面にいたところ、本庁の私服刑事から「田中さんですね。ここにいてもらっては困る」と言われた。やんわりとした口調だったが、退去要請だ。
これでピンときた。首相はここから出るんだな、と。新宿御苑には門が三つある。金魚のフンよろしく権力者についてまわる記者クラブとは違い、どの門から出入りするのか分からない。警察の退去要請は最高のヒントだった。
別の私服刑事からは「総理の顔を正面から撮られるのは困る」と告げられた。警察から力づくで排除されると元も子もなくなる。千駄ヶ谷門正面から少しだけ横に移動した。門はしっかり見える位置だ。
筆者は四谷署と本庁の私服刑事計4人に付き添われて、安倍首相が出てくるのを待つことになった。取材バッグの中味を見せろと言われたが、現場を離れたくない一心だったので応じた。
「アルタの騒動があったから警戒が厳しくなっているのか?」と聞くと、刑事は「あれ以降厳しくなっていますね」と答えた。
先月21日、安倍首相がフジテレビの『笑っていいとも』に出演するため新宿のアルタスタジオを訪れたところ、抗議のデモ隊が殺到し大騒ぎになった。官邸と警察はこれに懲りており、首相が外出する際は警備が厳しくなっている。
午前10時30分、総理専用車、覆面パトカー、番記者用ハイヤーなどからなる車列は、千駄ヶ谷門を出ると猛烈なスピードで駆け抜けて行った。交差点の信号はすべて青信号になるよう操作されているのだ。
抗議のデモ隊は御苑に近づくことさえできなかった。最寄り駅の都営大江戸線「国立競技場」駅前で抗議の声をあげるのがやっとだった。
首相の顔が「特定秘密」に指定される日が来るかもしれない。秘密保護法成立前夜には、新聞の「首相動静」を秘密指定すべきとの意見も閣僚経験者から出たほどだ。
記者クラブ・メディアは報道の自由が保証されているが、フリーランスは対象外である。首相の顔を撮影したら特定秘密保護法違反で逮捕される・・・悪夢が現実のものとならないことを祈るのみだ。
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