【都知事選】 明日の食事と近未来の戦争

「細川護熙は命をかけて原発を止めます」。福島から東京に避難している女性は細川陣営の選挙ボランティアだ。彼女は声をからして訴え続けた。=7日午後、渋谷ハチ公前 写真:筆者=

「細川護熙は命をかけて原発を止めます」。福島から東京に避難している女性は細川陣営の選挙ボランティアだ。彼女は声をからして訴え続けた。=7日午後、渋谷ハチ公前 写真:筆者=

 「僕みたいな有象無象(うぞうむぞう)でも真っ直ぐに見てくれるのが宇都宮さん」「日本国民が崖っぷちに立っている。(崖下に落ちないように)止めてくれるのは細川さんだけ」―

 きのう赤羽駅前(北区)で聞いた宇都宮、細川両候補に対する支持者のコメントだ。脱原発を共に掲げる両候補だが、支持者の層は相当に異なる。

 細川候補の選挙運動を手伝う2児の母(30代・広島出身)は次のように話す。「原発は静かな原爆。 原発に反対する細川さんは “ 命を守る ” 決意が固い」。

 居ても立ってもいられなくなり大阪から細川候補の演説を聞きに来たという男性(60代)の姿もあった。終戦の翌年(昭和21年=1946年)に生まれた彼は、軍国主義に傾く安倍政権の姿勢に危機感を露わにする―

 「原発から出るプルトニウムは核兵器だって作れる。アベは死に突き進んでいる。細川さんは命と平和を守る人。戦争を経験した世代が残っている間に日本人の価値観を変えなくてはならない。今回の選挙は戦争を知らない世代と戦争を経験した世代がコミュニケーションできる良いチャンスだ」。

 宇都宮候補のチラシを配っていた男性(40代・自営業)は、おととしの都知事選でも宇都宮陣営を手伝った。男性はガンに冒されているため、働いたり働けなかったりの生活が続く。「障害があったり、病気になったりするとすぐに切り捨てられる。弱者にやさしいのが宇都宮さん」。彼は宇都宮候補を支持する理由を語った。

 『嗚呼貧困に胸痛め…』と書いた大きなプラカードを持つ男性(60代・年金生活者)は2人の息子がいるが、2人とも非正規労働者だ。

 「上の息子は結婚しているが、親の支援が必要。下の息子は実家に住んでいるから生きてゆける。非正規(労働者)は生活してゆけないよ」。

 今や全労働者の4割、若者の6割が非正規労働者だ。

プラカードを持つ女性は非正規の看護師。「貧困問題を勉強していて宇都宮さんを支持するようになった」。=6日、赤羽駅前 写真:筆者=

プラカードを持つ女性は非正規の看護師。「貧困問題を勉強していて宇都宮さんを支持するようになった」。=6日、赤羽駅前 写真:筆者=

 「むのたけじ氏は “ 第3次世界大戦、原子爆弾が乱れ飛ぶ世界 ” と近未来の日本を危惧する。お年寄りは戦前・戦中の日本を体験してきた。いつか来た道とならないように、 “ ストップ・アベ ” に命がけだ」

 筆者がツイッターでこのように つぶやいた ところメンションが賛否両論殺到した。なかでも切実だったのは、ハンドルネーム『きらー・くあーん ‏@kiraku_ann』さんのメンションだった―

 「今の若い層は “ 全面核戦争 ” より遥かに高確率で起きる “ 自らの無職化、ワーキングプア化 ” を、そして結婚資金も貯められず…という恐れを感じているのだと思います…(後略)」。若者たちの貧困への恐れは切羽つまっていることがヒシと伝わってくる。このメンションが飛び込んできた夜、筆者は朝まで寝つけなかった。

 宇都宮候補の支持層は「食えなくなることへの不安に怯える人」が多い。細川候補の支持層は近未来に日本が破局することを危惧する。

 2週間、両候補の演説会場を見てきたが、いずれも支持者の目が真剣だ。庶民が「究極の選択」状態に置かれていることに愕然とする。

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