「草の根」のデモは日比谷公園から出発できなくなったことを、あらためて思い知らされる交渉だった―
11日に予定されていた日比谷公園からの「デモ出し」を、東京都が許可しなかったことに異議を唱える首都圏在住の有志たちがきょう、1,311人の署名を添えて東京都東部公園緑地事務所に使用許可を求めた。
公園事務所側は管理課の前田泰係長が対応した。冒頭、署名を呼びかけた千葉県在住の男性(30代)が「日比谷公園が使えなくなり残念な思いをしている人達がたくさんいる。何とか使わせてもらえないだろうか」と要望した。
前田係長は有志たちの願いを言下に“却下”した。「(『公園の管理上支障をきたす』として使用許可を求める申し立てを棄却した)高裁の決定通り。集会は野音か公会堂の使用後ということになっている…(後略)」。
戦後半世紀余りにわたって数えきれないほどのデモが、日比谷公園から出発している。それも野音も公会堂も使わずに。これまで許可されていたのになぜだろう。前田係長は「これまでは東京都のミスと言えばミス」と照れ笑いを作りながら説明した。
反原連主催のデモだからだろうか。反原連は3月11日と7月29日にも日比谷公園出発のデモを行っている。7月29日は、機動隊の車両が塞がなければ、デモ隊が国会に突入するのではないかと思わせるほどの勢いだった。
そして8月、東京都が「公園使用許可の規則変更」。あながちミスとは言えまい。
どのような性質であれ、今後は野音か公会堂を使用した後でなければ日比谷公園からの「デモ出し」は認めないという。野音は8万5千円から、公会堂は15万8千円からとなっており、庶民が簡単に利用できる価格設定ではない。しかも最短でも6ヵ月前から予約が必要だ。
有志のメンバーで団体職員の女性(世田谷区在住)が「おカネがなきゃ発言できないのは違和感を覚える」と訴えた。“地獄の沙汰もカネしだい”というが、“集会、結社、表現の自由もカネしだい”の世の中になったのだろうか。
「当日(11日)、ただ散歩で集まったという人たちで日比谷公園が埋まり、園内での通行に支障が出たら、警察に出動要請するのか?」と質問すると、前田係長は「そういうこともありうる」と答えた。
《文・田中龍作》