東京都が集会・デモに対して中東の独裁国家以上に厳しい規制をかけてきた。右も左も市民も業界も…あまたの団体が半世紀以上に渡ってデモの出発点として利用してきた日比谷公園。
ところが公会堂か野音を利用した後でなければ、デモの出発場所として日比谷公園を使えないことが明らかになった。公園を管理する東京都が手続き規則を8月に変更したことが理由だ。(野音は8万3,500円から、公会堂は15万8,400円からと使用料はバカ高く、最低でも6か月前から予約が必要)
首相官邸前の原発再稼働反対集会を主催する「首都圏反原発連合」のメンバーが11月11日に予定しているデモの出発・集合場所として日比谷公園を使用したいと公園サービスセンターに申し出たところ、「8月に都から『使用の受付はやるな』とお達しがあった」と言われ拒否された。
反原連側はその後、東京都建設局公園緑地事務所と交渉を持つなどしたが、都側は「意思は変わらない」として使用拒否を貫いた。
反原連は今年3月11日と7月29日に日比谷公園集合・発でも同じ趣旨のデモを行っている。
突然の使用拒否に納得がいかない反原連は10月30日、東京都を相手どって「使用許可を認めよ」とする仮処分を東京地裁に申し立てた。(行政上の仮処分のため「仮の義務付け申し立て」となる)
申し立て書によると公園利用を認めない不当性は以下の通り―
・都市公園は道路と並ぶ典型的な公共用物である。許可制が用いられる場合も、その目的からして禁止の必要がない場合には使用の許可をしなければならない。
・都市公園は地方自治法244条にいう公の施設であって、正当な理由がない限り、住民がこれを利用することを拒んではならず、また住民の利用について不当な差別的扱いをしてはならない。
東京都による今回の措置は、何より憲法21条で保障された集会、結社、および言論の自由の侵害にあたる。
東京地裁は反原連の申し立てをきょう夕方、却下した。反原連は東京高裁に準抗告し、今後の対応を話し合う。
高千穂大学の五野井郁夫准教授は事態を憂う―
「日比谷公園は日本の戦後史のなかで最も象徴的な場所、それを使わせないということになれば、私たちが戦後作りあげてきた民主主義を否定することになる」。
東京都公園事務所の担当者が交渉のなかで「いろいろ圧力がある…」と漏らしたことも明らかになっている。震源は石原前知事かとも勘ぐりたくなる。
治安警察を張り巡らし反体制派を拷問などにより徹底的に弾圧した、エジプトのムバラク政権下でさえタハリール広場を使用できた。石原都政(規則変更は8月)は、中東の独裁国家以上に思想信条の自由を認めない政治体制を敷いたようだ。これこそ恐怖の置き土産だ。
《文・田中龍作》