森喜朗氏、麻生太郎氏…不人気の首相は数々いたが、地元で落選運動を起こされた首相がかつていただろうか。それも自宅と事務所にまで押し掛けられて。
第95代内閣総理大臣の野田佳彦氏は、地元の船橋市(千葉4区)で確認されているだけでも2度、自宅と事務所にデモを掛けられている。不人気の最大の理由は「原発再稼働」と「消費税増税」だ。庶民の健康と生活に密接に関わる大事な政策をいとも簡単に決めてしまったのである。
大人しいのが国民性と言われる日本人も堪忍袋の緒が切れたのか。とうとう『野田佳彦を落選させる勝手連』まで登場した。
消費税増税が参院で可決成立した翌日の11日夕、勝手連が早速動いた。野田首相の選挙区(船橋市)に隣接する習志野市のJR津田沼駅頭で街宣活動を行った。繁華街の津田沼に買い物や飲食で訪れた船橋市民にアピールするためだ。仕事を終え船橋に帰宅するサラリーマンも対象だ。
船橋在住の女性(会社員・50代)は、09年の政権交代選挙で野田陣営のビラ配りを手伝ったが、この日は「野田佳彦を落選させよう」と書いたチラシを道行く人に手渡した。
「ここまでひっくり返るとは思わなかった。野田(首相)を落とさないと船橋が日本の恥になる」。前日、官邸前で「再稼働反対」のシュプレヒコールをあげ続けた彼女は、しわがれた声で語った。女性は憤懣やる方ない様子だ。
川崎市から駆け付けた主婦(50代)は「これだけ国民との約束を破る首相も珍しい。何としても落としたい」と力を込めた。
参加者の大半は、野田首相の自宅や事務所にデモをかけるものと思い込んでいた。街頭宣伝だけと知り、気勢を削がれたようだった。
参加者の怒りのボルテージは高い。「野田憎し」だけで官邸前に足を運んでいるという女性もこの日、津田沼駅頭で街宣活動に加わった。首相の地元で「近いうちに」金曜集会が開かれるようになるかもしれない。
《文・田中龍作 / 諏訪京》
◇
『田中龍作ジャーナル』は読者のご支援により維持されています。