米系投資ファンドに債権譲渡された東京・品川駅前の京品ホテルを自主管理していた労働組合・東京ユニオン京品支部に対して東京地裁は25日午前9時から警官隊を先頭に「立退きの強制執行」に着手した。
入口でピケを張っていた支援者ら300人が激しく抵抗したが、9時20分までに警官隊によって次々とゴボウ抜き排除された。逮捕者などは出なかった。
労働組合が裁判所の退去命令に従わないことを表明していたため、日の出直前の午前6時30分、高輪警察署から制服警官約50人が出動した。ホテル前を走る第1京浜国道は、強制執行のため片側車線が封鎖された。
午前7時、東京地裁の小倉豊執行官らが到着し、ホテルに入ろうとしたが支援者らに押し返され、「帰れ!」「帰れ!」の大合唱の中、激しい揉み合いとなり、騒然とした状態が続いた。
現場はJR品川駅高輪口の目の前。日曜日でも人の往来が多く、ものものしい雰囲気に包まれ、野次馬で黒山の人だかりとなった。白昼に衆人環視でテレビカメラも撮影する中、警官隊は凄まじい勢いで支援者のピケ隊のゴボウ抜きを続けた。
ピケラインは20分もしないうちに警官隊によって破られた。ホテル玄関では従業員たちが最終ピケラインを張った。「職場を奪わないで」の叫びも空しく、警官隊はあっという間にホテル内に踏み込んだ。
9時25分、館内放送が流れた。「こちらは東京地裁の執行官です。ホテルに残っている方はすぐに退去して下さい。従わない場合は公務執行妨害となります」。裁判所の『制圧宣言』だ。
間髪を入れず執行官が1部屋ごとにチェックし、空き部屋には「執行終了」のステッカーを貼って回った。
筆者は執行官に「あなたが最後ですから(速やかに)出て行って下さい」と促された。「午前11時(のチェックアウト時間)までの分は宿泊費を払っとるんじゃい!」と言い返すと、私服刑事が来た。最期の最期まで司法と警察は一体だった。
ホテル近くの歩道では、労働組合や支援者らが集会を開き、口々に強制執行の不当さを訴えた。「これが日本の法律ですか? どこに正義はあるんですか?」。ホテル労働組合(東京ユニオン京品支部)の金本正道支部長は声を絞り出すようにして叫んだ。