
ボリバル紙幣。これだけの量で1ドルにもならない。両脇の置物はすべてボリバル紙幣でできている。=12日、ボゴタ市内 撮影:田中龍作=
ボゴタの商店街を歩いていてギョッとした。露店に札束が積まれているではないか。治安の悪さは世界有数のコロンビアで、現ナマをむき出しで置くとは。
だが札束に近づいてみて納得した。ベネズエラの紙幣ボリバルなのだ。
100万ボリバル札、50万ボリバル札、20万ボリバル札…高額紙幣に目を瞠るが、札束の山を集めたところで1ドルにもならない。
ハイパーインフレに見舞われた国ベネズエラの通貨だからだ。人々はデジタル通貨で買い物をしていると聞く。田中が2019年に訪れた時、支払いはクレジットカードだった。
ハイパーインフレは経済破綻の象徴だ。国家破綻の象徴でもある。
「これでは生きてゆけない」。790万人(昨年5月現在、UNHCR)が国外へ脱出した。国民の4人に1人である。
ハイパーインフレの理由は、マドゥロ大統領が財政難を乗り切るためにボリバル紙幣を増刷したことにある。
下地もあった。前任者のチャベス大統領が貧困層の人気を得るためにバラ撒きを続けたのである。財政は赤字となった。

買い物客はカードで支払う。現金払いは一度も見なかった。=2019年、カラカス市内の市営マーケット 撮影:田中龍作=
日本にも「日本銀行券はよ」「金を刷れ皆に配れ」と唱え、貧困対策を旗に掲げる政治家がいる。
日本は国家の底が抜けており、危機を自覚しない高市政権のズサン極まりない政治運営をマーケットが見透かせば、円が売り浴びせに遭うことも考えられる。
円が紙屑となり露店に山積みされないことを祈るのみだ。
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田中龍作は大赤字を覚悟で南米取材を決行しました。トランプの乱行により世界秩序が変われば、日本も巻き込まれるからです。





