民主活動家・劉暁波氏のノーベル平和賞受賞に反発を強める中国が、日本政府に対して授賞式への出席を控えるよう要請してきた。対中関係を考慮する政府は、締切りの15日を過ぎてもノルウェーに出欠の回答を保留したままだ。
この問題について16日の記者会見で筆者は前原誠司外相に質した。前原外相は「日本にとってノーベル平和賞というのは重みのあるものであり、毎年(駐)ノルウェー大使を出席させている。適切な対処をする」と述べ、日本は例年通り出席するとの見解を示した。
官邸はどう判断するだろうか。菅首相は「日中関係は修復できた」などと喜ぶ始末だから、中国の要請を重く見てノーベル平和賞授賞式にノルウェー大使を出席させないこともありうる。
「尖閣事件」では前原国交相(当時)が中国船長の逮捕を指示したのに対して、仙谷官房長官は反対した。こうした前例もある。
もし出席させなければ、世界の笑い者となり内閣支持率はさらに低下するだろう。支持率低下の最大の原因は対中外交の躓きにあるからだ。
菅政権を記者クラブメディアは見捨て始めたようだ。9月の代表選挙で小沢一郎元幹事長を叩く時は、まるで寄り添うかのように共闘していたにもかかわらず、今は手のひらを返したようにつれない。
「尖閣事件」をめぐる官邸の対中外交は確かに未熟だが、トラブルの発端は中国側にあるはずだ。だが新聞やテレビニュースは中国を本気で批判しない。ツボは外してある。特派員を退去させられるのが恐いからだ。
「天安門事件の武力鎮圧を後悔している」とする鄧小平の遺言があることをスッパ抜いた某メディアの幹部は、中国大使館に呼びつけられ大目玉を食らった。イエローカードは2回続くとレッドカードとなる。
文化大革命の現実をありのままに書いた産経新聞は実際に退去させられた。あまり好きな新聞ではないが、どの社も中国に阿るなか事実を報道した姿勢は立派だ。
マスメディアと政権がご都合主義を続ける限り、一貫した外交はできるはずもなく、隣国から足元を見透かされる。
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