投票所のひとつトリジャーニ幼稚園には、老若男女を問わず有権者が次々と訪れた。投票率が50%に達しなければ、国民投票そのものが無効になるため、投票所に足を運ぶ人のほとんどは「原発反対」だ。
アールーノ・ペックさん(写真:38歳・男性=ウェブ・マスター)は苦々しい表情で次のように語った―
「福島の事故には言葉を失った。人間が原発をコントロールできないということが実証された。イタリアの技術力を考えたら原発は無理。普通のゴミさえ管理できないのに核のゴミなんてとんでもない。福島の事故→ドイツの原発廃止→イタリア国民投票という大きな流れの中でとらえて行きたい。世界中に原子力エネルギーは要らない」。
デルフィーナ・ファブリーニさん(女性・30代)も「原発再開を認めない」に投じた一人だ。日本と同様、原発に対して女性は厳しい意見を持っていた―
「イタリアのような地震国で原発は危険このうえない。福島の事故には呆然とした。イタリアに届いてくる情報は矛盾していて本当は何が起きているのか分からなかった。事故後、ベルルスコーニ首相は『福島原発はちゃんとコントロールされている。だからイタリアも原発政策を推進できる』と吹聴していたほどだ」。
原発事故をめぐって「心配ない、安全だ」と政治権力者がうそぶくのは日本もイタリアも同じようだ。
「原発国民投票」は、投票率が今晩中に40%を超えれば明日午後の締め切りまでに50%を超えるものと見られている。前出のペックさんは投票を済ませた人のリストを見たという。「その数から察するに50%を超えるのではないか」と自信をのぞかせた。