イスラエル軍は15日、パレスチナ自治区ラマッラのアルビーレ村上空でドローンからデモ隊に向けて催涙弾を撃ち込んだ。田中龍作のカメラが捉えた。地元ジャーナリストによれば、ガザ以外のパレスチナ自治区でドローン攻撃があったのは、これが初めて。
空から火花を散らしながら降ってくる催涙弾に人々は逃げ惑った。イスラエル軍が放つ催涙弾は、れっきとした毒ガス兵器である。呼吸困難で死亡することも珍しくない。ガザでは生後8ヵ月の女の子が、イスラエル軍の放った催涙ガスを吸い込んで死亡した。いや殺された。
催涙ガスはこれまで地上部隊が放ってきたので、どちらから飛んでくるのか、予知できた。しかしはるか上空から急降下してくるドローンの攻撃は予知のしようがない。
2014年のガザ戦争でドローンから幾度も警告弾を落とされた経験のある田中も、最初は何が起きたのか分からなかった。まさか西岸(ウエストバンク)でドローン攻撃があろうとは思ってもみなかったからだ。
ドローンは世界中の戦場で戦争観や戦局を変えてきた。15日、パレスチナ側とイスラエル軍の前線は、膠着状態にあった。ところがドローンが飛んで間もなく、イスラエル軍はパレスチナ側の背後を突いてきたのである。
戦闘状態にある時だけでなく、人々はドローンから始終監視されることになる。不審な動きをすれば容赦なく撃たれる。ガザの子どもたちのPTSDの原因のトップはドローンの飛行音である。
兵器を搭載したドローンの使用は戦時の民間人保護などを定めたジュネーブ条約や国際人権規約に違反する、とアムネスティ・インターナショナルは指摘する。
この日、アルビーレ村ではドローンの飛行音が上空から降り注いだ。しかも催涙ガスという毒ガス兵器を空から降らせたのである。子どもたちが心配だ。イスラエルに対する不信と恐怖はさらに高まることだろう。
この日はパレスチナ人にとってナクバ(大災厄)だった。1948年5月14日のイスラエル建国でパレスチナ人たちは土地を追われた。その翌日をナクバと呼ぶ。イスラエルへの憎しみが最も高まる日だ。
イスラエルは よりにもよって ナクバの日にドローン攻撃を実行したのである。
トランプ米大統領が「エルサレムをイスラエルの首都と認定する」と宣言して以来、パレスチナ自治政府のアッバス議長とイスラエル政府との対話のチャンネルは途絶えたといわれる。
ドローンが今後も西岸の上空を舞うことになれば、イスラエルとパレスチナの緊張が一層高まるものと見られる。ドローンの西岸上空飛行は新たな大災厄となりはしないだろうか。
イスラエルとドローンの共同開発を進めているのは、他ならぬ日本だ。
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