前原代表の「想定外」だった 野党大合併、頓挫の理由を明かす

解散8日前。水面下で着々と大新党構想が進められていた。よもや今のような事態になろうとは、2人とも予想だにしなかっただろう。=9月20日、都内 撮影:筆者=

解散8日前。水面下で着々と大新党構想が進められていた。よもや今のような事態になろうとは、2人とも予想だにしなかっただろう。=9月20日、都内 撮影:筆者=

 前原・民進党代表の「現時点では想定内」発言は、真っ赤なウソである。民進党の3分裂、希望の党の自壊は、前原代表の「想定外」だった。その舞台裏を明かす―

 大合併による新党構想は民進党代表選挙前から進んでいた。田中は代表戦の最中に小沢・自由党代表に近い筋から小沢・自由党代表のシナリオを聞かされていた。夏真っ盛りの頃である。

 前原圧勝を読んでいた小沢は代表選が告示(8月21日)される前から腹心を民進党から離党させ日本ファースト(当時・のちに希望の党)に送り込んでいた。

 小沢のシナリオはこうだった―
 まず民進、自由、社民で合併する。その後、日本ファーストとも一緒になる。   

 安保法制が強行採決された2015年秋ごろから小沢と共産党の志位委員長は会合を重ねてきた。

 共産党が下ろせる選挙区は大胆に下ろす。野党共闘という名の候補者調整は翌夏(2016年)参院選で実った。

 小沢は民進党の前原代表とも会合を重ね薫陶を授けてきた。

 枝野を退けて新代表に選ばれた前原はテレビ番組のインタビューで、共産党との選挙協力に否定的な発言を繰り返す・・・野党共闘は成立しない。勝てると踏んだ安倍首相は解散に打って出た。安倍は まんまと おびき出されたのである。

衆院解散前日。選挙向けの駆け込み寺として希望の党が期待を一身に集めていた頃だった。こちらも今の事態を予想だにしなかっただろう。=9月27日、都内 撮影:筆者=

衆院解散前日。選挙向けの駆け込み寺として希望の党が期待を一身に集めていた頃だった。こちらも今の事態を予想だにしなかっただろう。=9月27日、都内 撮影:筆者=

 9月28日午前、安倍が衆院を解散すると、前原はその日の午後、両院議員総会で希望の党との合流計画を発表。民進党の議員たちは満場一致で了承した(異論も出たようだが)。

 小沢が小池百合子と水面下で続けていた交渉は、実を結んだかに見えた。

 「皆で希望の党に行きましょう」。前原代表が希望側に一括して名簿を出すので、踏み絵は踏まなくてよい。ごく一部をのぞいてほとんどの議員(解散後は前職)が、希望の党への移籍を希望した。

 巨大野党の出現に安倍はたじろいだ。政権交代が見えてきた ― ここまでは小沢のシナリオ通りだった。

 「日本初の女性首相」などとマスコミが囃し立てた。すっかりその気になった小池は権力欲をむき出しにした。その後の転落は、あらためて述べるまでもない。

 「希望者は全員受け入れ」の一筆を取っていなかった前原は迂闊だった。わざと騙されたとの見方もある。

 合併新党の幹事長を狙っていた小沢は小池に裏切られた。小池への電話連絡もつかなくなっている状態という。

 自由党出身者への嫌がらせは凄惨を極める。民主党時代から長年耕してきた選挙区から見知らぬ選挙区に国替えさせているのだ。そこは自民党の有名政治家が抜群に強い選挙区だ。比例復活も絶望的である。死刑執行に等しい。

 策士、策に溺れる。小池の自分ファーストは、安倍独裁を倒せる千載一遇の機会をぶち壊した。裏切りは政界の常とはいえ、国民までも裏切った罪は永遠にリセットできない。

  (敬称略)

    ~終わり~

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