取材は前回(2014年)の戦争時―
「5日間の停戦」はきょう(現地時間18日24時)で幕切れとなる。カイロでの交渉は膠着したままの状態が続く。ハマスが容易に譲歩できない理由を政治部門高官が語った―
記者:戦前ハマスの人気は落ちていたが、戦争が始まると人々はハマスを支持するようになった。もしカイロ交渉で何も獲得できなかったら、ハマスの人気はまた落ちるのではないか? 7年間の封鎖で人々は疲れているから。
高官: そのような支持率調査は誰が言っているのか? 証拠がない。 もしカイロ交渉でハマスが何も獲得することができなかったら、(武装)抵抗を続ける。今回のイスラエル軍侵攻でパレスチナ人は多大な犠牲を払っているからだ。
前に進むしかない。戦い続ける。家を破壊され、家族を失った。我々は抵抗を続けるしかない。
記者:もしハマスがロケット弾発射を止めれば、イスラエルは軍事侵攻を止めるのではないか? さもなければ国際社会がイスラエルを批判するだろう。
高官:それは間違ったイメージだ。かりにハマスがロケット攻撃を止めたとしても、イスラエルは軍事侵攻をしてくる。2012年の侵攻がそうだった(※)。
西岸の人々はロケット弾を撃ったりしてはいない。それでも土地を奪われ、入植地がどんどんできてゆく。
西岸のパレスチナ人は入植者や軍に攻撃されている。
もしハマスが抵抗を止めれば、イスラエルはすべてのパレスチナ人を殺すだろう。
ネタニヤフ(イスラエル首相)は、第2次世界大戦でユダヤ人をゲットーに押し込んだヒトラーと同じことをしている。
国会議員も虐殺に手を貸している。イスラエル国民の87%が軍事侵攻を支持していることも問題だ。
パレスチナ人とユダヤ人は(イスラエル建国の)1948年まで平和裡に共存していた。
記者:戦争が長引くとハマスの力は衰えたりはしないか?
高官:それはない。長い間、備えてきたから。
2008~2009年の大規模侵攻ではイスラエル軍が一方的に撤退して収束した。
8日間の空爆となった2012年の戦争は、最後の2日間で停戦合意した。合意条件は「ハマスがロケット攻撃を止める」「イスラエルは軍事侵攻をやめる」というものだった。
今回はロングランの交渉となっている。ハマスが求める「ガザの封鎖解除」。イスラエルが要求する「ハマスの非武装化」。根源的であるがゆえに双方が簡単に飲めない。
ハマスは深刻な財政難に陥っているとされる。公務員の給与を7ヵ月も払っていないというのだ。
7年間に及ぶイスラエルの封鎖に加えて、シーシ政権の登場でエジプトとの地下トンネルが潰された打撃が大きい。
ネタニヤフ首相はそこを見逃さなかった。ハマスに財政援助を持ちかけているようだ。西岸を握るファタハとの統一政権を阻止するためである。
ハマスが統一政権を組みたがっていることを見透かしているのだ。パレスチナが国際社会の支持を得るには「統一政権」でなければならない。それを阻むイスラエル。
パレスチナの独立は至上命題だが、ハマスにとっては目先のカネも必要だ。イスラエルの掌で転がされるパレスチナのジレンマがそこにある。
~おわり~
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※
2008~2009年の大規模侵攻も突然始まった。