菅首相の昨夕(18日)の記者会見を受けて、新聞各紙は「発・送電の分離」「保安院切り離し」の見出しを一面に踊らせている。(財界の機関紙ともいえる日経はさすがに「発・送電の分離」は掲げていない)
官邸はいささか鼻白んでいるのではないだろうか。というのも記者会見の目的は、26日から仏ドービルで開催されるG8サミットに向けて「菅政権は自然エネルギーの開発、普及に力を入れますよ」「原発の安全性も確立しますよ」とアピールすることだった。(菅首相の発言の全容は官邸のHPに掲載されているのでご覧頂きたい)
各国首脳陣を前に「自然エネルギーへのシフト」を高らかに謳いあげて、内閣支持率のアップを狙う。インドなどへ原発を売り込んでいる最中であるため、「原発の安全確立」も強調しなければならなかった。
だが、それでは当たり前過ぎて見出しが立たない。ニュースとして際立たせるために「発・送電の分離」「保安院の切り離し」としたのだ。
そもそも「発・送電の分離」は菅首相の口から言葉ではない。フリーランスの岩上安身記者が賠償スキームに絡んで「送電網を担保に取り、発・送電を分離することは考えていないのか?」と質問したことに対して、首相が「そういう議論も出てくる」と苦し紛れに答えただけなのだ。
首相は電事連と電力総連を敵に回して戦争する気もないし力もない。電事連から巨額広告費や接待で甘い汁を吸っているマスコミも「発・送電の分離」を歓迎したりはしない。
経産省に対しても首相とマスコミは同様のスタンスだ。「保安院の経産省からの切り離し」も首相の人気取りのアドバルーンと見てよい。仮に実行したとしても骨抜きになるだろう。東電の負担を軽くし、その分国民に押し付ける賠償スキームが経産省主導で進んでいることを見れば明らかだ。
経産省の会見で記者クラブメディアは同省官僚を追及も批判もしない。筆者は記者会見で今回の原発事故における経産省の責任を追及しようとしたが、それを遮ったのが記者クラブ幹事社だった。そんな新聞・テレビが経産省の既得権益に触れる報道をするわけがない。事実ない。
誰より「発・送電の分離」などサラサラ考えていないのは菅首相だ。東電が17日発表した夢物語の工程表を鵜呑みにしたことからも分かる。原子力部門のトップである武藤栄・副社長の言葉をオウム返しにするオマケまでつけて。
菅首相が人気取り目当てで掲げる「エネルギー政策の抜本見直し」に絡んだマスコミ報道をゆめゆめ信用してはならないのである。