難病と戦う市民運動のドンが、迷走の続く菅直人首相に苦言を呈した――
市民運動の総本山とも言える「市民運動全国センター」の須田春海・代表世話人(68歳)は昨春、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し闘病生活が続く。
須田氏のこれまでの論文と発言を集めた『須田春海採録集~生活社』の出版記念パーティーが14日、衆院議員会館で開かれた。携帯用人工呼吸器を着けた須田氏は、難病で弱った力を振り絞って出席した。妻の芳子さんや長女の野生子(のぶこ)さんが車椅子を押した。
須田氏の薫陶を受けた政治家、環境活動家、市民運動家は数えあげたらキリがない。この日も江田五月・前参院議長、石毛えいこ衆院議員、大河原雅子参院議員らが駆けつけた。
“教え子”の一人である菅直人さん(職業:一応政治家)から祝電が届いた。「先輩にして同志のような須田さん(中略)私たちの政治の原点は何だったのかを改めて意見交換したい・・・」。
福山哲郎・官房副長官は須田氏の手を握り関西弁で語りかけた(写真・上段)。「須田さん、どした~ん?元気出さんとあかんやないの」。
須田氏は携帯用ホワイトボードで筆談した。「菅はダラシナイ。仙谷は頭が良すぎる」。福山官房副長官は一字一字を食い入るように見つめた。
須田氏は病床にありながらも欠かさずネットのニュースに目を通しており、政治の動きをしっかり把握しているのだ。
「市民運動出身」というフレーズだけが売りの菅首相に須田氏の一喝は届いただろうか。各方面から見放され支持率低迷に苦しむ菅首相は、とうとう出身母体からも愛想を尽かされた格好だ。
須田氏は菅首相に向けて「市民にもっとメッセージを」とも書いた。『須田さん、今となっては遅すぎた』、筆者は喉元まで言葉が出かかったが飲み込んだ。
菅首相は裏切りが日常生活の一部となっているようだ。『菅さん、病床に伏せる“恩師”をこれ以上落胆させないでくれ』。筆者は願わずにはいられなかった。
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