「けんか腰の外交」「戦争に道を開く集団的自衛権の行使」…細川候補は街頭演説で安倍政権のタカ派姿勢を批判した。昨夜(9日)、敗戦を語った際も「戦前に戻そうとする勢力との闘いだった」と強調している。
細川氏の祖父、近衛文麿はA級戦犯とされ服毒死した。叔父の文隆氏はシベリアに抑留されたまま帰らぬ人に。細川氏は生い立ちからして「戦争をしてはいけない」という意識が人一倍強い。
細川氏の街頭演説では髪に白いものが混じった聴衆が目立った。彼らは「いつか来た道」を憂えた。舛添候補が漁夫の利を得て当選すれば、都民が安倍政権の右傾化に信任を与えたことにつながるからだ。
「怖い時代に入っている。有権者にはそれが分かっていない。情報統制はすでに始まっているではないか。舛添に入れた人は自分の子供が徴兵されても泣くんじゃないぞ」。選挙戦の最終日、数寄屋橋で行われた細川候補の街頭演説会に訪れていた男性(60代後半)の言葉だ。
「こんな都知事選は初めて」と多くの声がツイッター上に流れた。確かにこの数十年というもの、都知事選は国政に真っ向から挑むような選挙ではなかった。ただの有名人の顔見世興行だった。だが今回は違った。
選挙の結果しだいでは安倍政権を立往生させることも可能だった。原発再稼働だけではなく右傾化にも待ったをかけることができた。
だがマスコミが争点にしたのは、オリンピック、福祉、防災、景気対策などだ。原発は少し触れたが右傾化については全く触れなかった。国政の問題という理由からだろうが。
ネット上では「もうマスコミはいらない」という声が飛び交った。主要候補はツイキャスで街宣風景を全編中継し、聴衆は自宅から声援を送った。視聴者は数千人、多い時は万を超えた。マスコミのフィルターを通さず、街頭の聴衆と一体感を共有することができた。
リアルとネットが融合し、世論が形成されていく新たな過程の予兆がした。だが、遅すぎたのではないか。これが都民にとって自由な選挙ができる最後の機会ではないのかという不安が頭にこびりついて離れない。秘密保護法が成立したのはわずか2ヵ月前のことなのだ。
多くの高齢者や知識人たちは今、安倍政権にとにかくNOを言うことを優先させたいと願った。その願いを細川氏に乗せて賭けた。彼らには間もなく国会に上程されるであろう改憲と徴兵制の道筋が見えているのだ。
「2・26事件(昭和11年=1936年)」の日も東京地方は記録的な大雪だった。この事件を境に自由な言論は封殺され軍部が政治の主導権を握る。日本は無謀な戦争へまっしぐらに突き進んだ。