「このままでは共倒れになる」。脱原発陣営の分裂選挙に危機感を抱く有志たちが、きょう宇都宮けんじ候補と細川護熙候補に一本化を求めるアピールをした。
一本化を求めているのは「脱原発都知事候補に統一を呼びかける会」。弁護士、作家、ジャーナリストなど19人からなる。同会はきょう午後、日本プレスセンターで記者会見を開いた。
会見にはこの1月で100歳を迎えた老ジャーナリスト、むのたけじ氏も参加した。むの氏は開口一番、「社会党関係者、共産党関係者、組合関係者いませんか? おかしいな? おかしいよ」と声を張り上げた。
むの氏は「人民の幸せのためにまとめることができない政党は(選挙後)、吹っ飛ぶと思います」と暗に社民、共産両党を批判した。
むの氏は戦後の大衆運動が盛り上がっては分裂し、崩壊してきた歴史をふりかえった。2.1ゼネスト(1947年)、60年安保、三里塚…「数々の闘いをやってきたが、民衆のほうが負けてしまった。息が切れてバラバラになっちゃった」。
「70万人で議事堂を囲んだ60年安保を思い出した。日本の運命がどうなるのか、何としても日本の路線を変えなければならない。争われるのは都知事のイスひとつだが、そこに込められた時代の問いかけは、第三次世界大戦、原子爆弾の乱れ飛ぶ世界を許すのかどうかだ。大事な大事な分かれ道だ」。むの氏は危機感をあらわにした。
作家の落合恵子氏は会見に出席した理由を述べた―
「都知事選はひとつの自治体だけでなく、国政をも左右するものだと思う。投票を合計した場合、脱原発でない候補を上回ったら何と考えたらいいのか。どちらかに降りてくださいというのではない。話し合いの機会を作ってほしい」。
「七世代後の子ども達、とよく言われるが、次世代かその次くらいにとんでもない負の遺産を残す。なんとかして一つにまとまろう、そのお願いをこめて(出席した)」。
ピースボート共同代表の吉岡達也氏は、今回の脱原発候補分裂選挙を、韓国の民主化勢力一本化失敗と、ブッシュJr.を当選させたアメリカ大統領選に例えてみせた。
「韓国では全斗煥独裁政権の後、金泳三、金大中の両民主化勢力が分裂し、独裁路線を継承するノテウ氏が大統領に就任した。アメリカではブッシュ、ゴア両氏が立った時に、著名な社会運動家ラルフ・ネーダーが立候補して票が流れたためにブッシュが当選し、イラク戦争を始めた」。吉岡氏は大きなうねりを創り出せないもどかしさに語気を強めた。
昨日、有楽町駅前で福島県南相馬市の桜井勝延市長らが細川候補の応援演説をした。演説会の始まる30分も前から待っている初老の男性がいた。旅行用のキャリーケースを傍らに置いている。細川さんの演説を聴くためだけに福岡から上京したそうだ。渋谷、新宿と聴いて回り、その後、銀座に行くという。
男性は、福岡の九電前脱原発テント内でも脱原発候補の分裂に批判の声が上がったと言う。
「脱原発候補の一本化ができなかったことがものすごく残念だ。統一候補を立ててくれれば勝てた。地方からも一本化の声があることを伝えてほしい。政治勢力を結集することを考えてもらいたい」。
地方からも一本化を求める声が上がっている。悲鳴にも近い。この狭い日本に50基あまりも原発がある。今度事故が起きたら日本はおしまいだ。
再稼働容認候補をみすみす勝たせてどうするのだ。宇都宮氏も細川氏も切実に受け止めて頂きたい。