「グルジアの物乞い母子」~統制経済からは脱出したけれど

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物乞いの母子。これから厳冬を迎えるがどうしているのだろうか(グルジアの首都トビリシで。写真=筆者撮影)

 旧ソ連の西南端にあり黒海に面するグルジア共和国。モスクワのタガが緩み始めると構成国からいち早く独立(91年4月)した。ソ連崩壊より8ヶ月先立つ。スターリンの出生地でありながら皮肉である。

 地下資源もなく、80年間の長きにわたって社会主義の統制経済につかっていたグルジアは貧しい。1人当りのGDPは2,925ドルと日本の10分の1だ。

 「米CIA Fact File」によれば国連の貧困ライン以下で暮らす国民は30.3%。数字が正しければ3・3人に1人が1日1ドル以下で暮らす。

 首都トビリシには物乞いの姿があった。グルジアを横断したが、物乞いを見かけたのはこの母子くらいだった。道行く人が投げ込んでくれる“浄財”では暮らしていけないほど国が貧しいのか。それとも統計がウソなのか。

 ベルリンの壁が崩壊して20年が経つ。社会主義下にあった国や地域に資本主義・自由経済が持ち込まれて豊かになったのかと言えば、そうではなかった。

 自由経済の行き過ぎた形とも言える市場原理主義は世界経済を混乱に陥れた。豊かな国の代表格のはずのアメリカやフランスでは家を失った人々が暮らす「テント村」が存在するようになった。かつてはWorld Richest Countryと呼ばれた日本でも昨年の年の瀬、住居を失った労働者が日比谷公園に押し寄せ炊き出しに並んだ。

 利益を生むことを考えない統制経済は永遠に貧しいが、自由放任も極一握りの人間だけに富が集中することになり、経済を崩壊させた。20世紀から21世紀初頭にかけて人類は両方のシステムを彷徨った。
 
 グルジアはこれから厳冬を迎える。

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