野中広務・元官房長官の暴露で政治評論家をはじめとする言論人にまで渡っていたことが明らかになった官房機密費。ヒステリックなまでに「政治とカネ」を報道する記者クラブがこの件では実におとなしい。
有能な官房長官は内閣を守るために巧みな情報操作を行うのだが、それには情報収集が欠かせない。小渕内閣で官房長官を務めた野中氏の情報収集力は目を見張るものがあった。
官邸詰めに限らず新聞・テレビ・通信社の記者は「夜回り」という取材活動を行う。日中、公の場では聞けない話を夜遅く政治家や当局者の自宅にあがり込んで聞くのである。
政治部記者であれば、与野党の政治家、秘書、官僚の自宅に夜回りをかける。外で飲みながら話を聞き出すこともある。夜回り取材では、どの議員が誰と不倫関係にあるといった類から、政権が倒れるようなスキャンダルまであらゆる話が記者の耳に入ってくる。
記者は夜回り先から社に戻り、キャッチしてきた情報を「夜回りメモ」にまとめる。怖くて表には出せない貴重な情報ばかりだ。野中官房長官のもとには、全社の「夜回りメモ」が翌朝届いていた、という。ある社の上層部にいる知人がつい先日明かしてくれた。
「○○が反党的な画策をしている」「○○省の官僚Aは■■議員と▼▼の件で裏約束をした」などといった情報が、毎朝、野中氏の耳に入っていた。永田町、霞ヶ関に関するすべての動きを野中氏は把握していたのである。政治部長→社の幹部→野中氏というルートだ。
筆者は政治部記者ではなかったが、選挙取材の「票読み」などが社の幹部から自民党の各派閥に抜けていることは感づいていた。だが全社の夜回りメモが毎朝、官房長官の手元に届いていたとまでは知らなかった。
週刊誌など雑誌の記事についても、野中氏は「どの新聞社」の「どの記者」のアルバイト原稿ということまでつかんでいた。
野中氏はマスコミ大手の政治部長、編集長や幹部を抱き込むのに、官房機密費を使っていたはずだ。機密費問題で新聞・テレビが静かなのは、結構な現金をもらっていたからとも推測できる。頬かむりを決め込み、沙汰止みとなるのを待つのだろうか。
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