鼓膜を突き破るような金属音が突然、耳元で響いた。子どもたちは拍手でたたえる。ハマスのロケット弾がイスラエルに向けて飛んだのである。
青い煙が立ち込めていた。発射基地があるのだ。通訳を務めてくれている友人に「テーク・フォト・オーケー?(写真を撮っていいか?)」と聞いた。
友人は「そんなことしたら(ハマスに)殺されるぞ」と怒った。
ガザ東部のザイトゥーン地区は、ハマス軍事部門「カッサム旅団」の訓練キャンプがあることから、イスラエル軍の標的になっている。
エスマイルさん(64歳)宅周辺は今回の空爆が始まって以来3回も爆弾を投下された。家は部屋の中までコンクリート瓦礫が散乱している。
「ノーサインだった」。エスマイルさんによれば、イスラエルによる事前通告はなかったという。
エスマイルさんの悲劇は、ハマスよりも過激とされる「イスラム聖戦」の幹部が隣に住んでいたことだった。幹部は逃げて無事だった。何とも皮肉である。
「ハマスもイスラエル軍も嫌いだ」。エスマイルさんは顔をしかめた。
ザイトゥーン地区の東に隣接するアル・シジャーイヤ地区を訪ねた。
同地区はイスラエルとのボーダーだ。当然イスラエルは“自衛”のため、アル・シジャーイヤ地区への攻撃を強化する。
11日夜、同地区の住宅密集地にイスラエル軍の空爆があった。一瞬にして19人(乳児1人含む)の命が奪われた。うち6人はいまだに瓦礫の下だ。妊娠6か月の女性と乳児も埋もれたままだ。
攻撃対象となった家屋は、ハマスとは何の関係もない。
着弾時、外で食事をしていたために難を免れた少年(14歳)が現場に戻ると、肉片が飛び散っていたという。
23歳の青年は「アラーの神のいる天国だけを望む。この世には何もない」と話す。淡々とした口調が絶望を感じさせた。
ボーダー沿いの敵対民族を正確な情報もなく叩くイスラエル。過剰防衛は悲劇を生むだけだ。
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