中国当局による日本人拘束事件 最後の一人帰国

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高橋さん=中央=は、記者会見の間じゅう怒った顔をしていた。怒りはどこに向けられているのだろうか(10日、フジタ本社・渋谷区。写真:筆者撮影)

 ゼネコン準大手フジタの日本人社員4人が軍事区域でビデオ撮影したとして中国治安当局に身柄を拘束された事件で、最後に解放された高橋定さんが10日、帰国し記者会見した。高橋さんは「3人が解放されたと知った後、(自分の)拘束がいつまで続くのかと思うと、憂うつになった」と話した。

 事件は高橋さんら4人が9月20日、中国河北省石家荘市の遺棄化学兵器処理事業に関する現地調査に向かうためレンタカーで事業予定地に向かっていた時に起きた。予定地近くと思われる細い道で「進入禁止」の看板がかかったゲートがあったため、車を止めてスチールカメラやビデオで撮影していたところ拘束された。

 高橋さんは「軍事区域との認識はなかった」と話す。

 「居住監視」と呼ばれる緩やかな拘束で、場所は20日から23日までホテル、24日からは軍の保養所のような所だった。高橋さんだけ29日から政府系の保養所のような場所に移された。

 高橋さんによれば取調べは合計3~4回で1回につき30分ほどだった。高圧的なこともなく丁重だった。なぜ拘束されたのか、なぜ高橋さんだけ残されたのか。中国治安当局からの説明はなかった、という。高橋さんが3人の解放を知ったのは30日朝、テレビに流れたテロップを見て。

 一人だけ残された理由を記者団から尋ねられた高橋さんは、「ビデオを撮影していたのが自分だったからだと思う」と答えた。

 解放されるにあたって始末書を書かされ保証金5万元(60万円)を払わされた。

 始末書には「軍事区域と書かれた看板を写してしまったのは罪になります」と書かされた。

高橋さんは「毎日『早く解放されますよう』願っていた」と話す。妻や娘とは渋谷区のフジタ本社で再会、「安心した」と言われた。

 日中関係(尖閣沖で海上保安部の巡視船に衝突した中国漁船の船長を逮捕した事件)が、4人の拘束に影響したのではないかと記者団が質問した。

 高橋さんは「それについて私からはお答えできません」とした。同社の中国での今後の事業展開を考慮しているのだろう。上司からも言い含められているに違いない。高橋さんは慎重に言葉を選んだ。最低限のことしか話さない。

 記者会見に同席したリスク対策担当の土屋達朗取締役は「プロジェクト(石家荘での遺棄化学兵器処理事業)の継続は難しい」と諦めきったようすだった。

 筆者が高橋さんに「もし中国に再度赴任するように言われたら、どんな気持ちですか」と聞くと次のように答えた。「解放されたばかりなので気持ちの整理がついていない…」。19日間に渡る拘束の間、最悪の事態となることも頭をよぎっただろう。

 筆者は「中国は嫌いな国ですか?」と畳み掛けるように聞いた。高橋さんの表情が激しく変化した。だが本心を飲み込むように「解放されたばかりなので気持ちの整理がついていない・・・」と繰り返した。

 「悪しき隣人」(枝野・民主党副幹事長)の地でのビジネス展開は絶えずリスクを伴っていることを改めて認識させられる事件だった。


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